9月1日のお昼くらいにバクタプルに戻りました。
早めの夕方から始まるお隣のティミという町のお祭りに行くことになっていたのです。ティミには友人が何人か住んでいて、その中のプラカッシュとビギャンがゲストハウスに迎えにきてくれることになっていました。
ちなみに「プラカッシュ」とは光という意味で、「ビギャン」とは科学という意味です。多くのネパールの人の名前には神さまの名前やステキな単語が名前になっています。
ビギャンはネパールで人気のイラストレーターでグラフィックデザインもします。プラカッシュはグラフィックデザイナーで、ビギャンを手伝っています。
そんなこんなでスクーターの後ろに乗ってティミへGO☆
ティミはセラミック作りが盛んな町です。あちこちでろくろを回している光景を見ることができます。
ティミへと走る途中でプラカッシュが
「もしみるがそうしたいなら、ビギャンの家でネワール族の民族衣装着れるよ。」と、夢のような言葉が…!
「えっ!着たい着たい絶対着たい!」
「よし、じゃぁまずビギャンの家へ行こう!」
何と、ビギャンのお母さんはレンタル衣装屋さんをしていたのです。それは観光客向けではなくて、地元のネワールの人たちに民族衣装をセットでレンタルするというものです。
興奮気味にビギャンの家について、キョロキョロしていると、
「サルエルパンツの衣装は着てたみたいだから、巻きスカートタイプにする?」となり、「うんうんうん。」と首を鳩のように縦に振りながらビギャンのお母さんに着せてもらいました♪



そしてピアス…。ピアス、入るかな…と心配していると、みんなの目が「絶対にピアスをするべし」と注目していたので、「じ、自分でする。」と言って廊下の大きな鏡の前へ。するとビギャンが心配して追いかけてきて鏡の後ろから超真剣な顔で見守っています☆ 下の写真↓プラカッシュはなぜかその写真をパチリ。


無事にピアスは入り、みんなホッとしたところへチヤ(ミルクティー)とビスケットが♪ 私がビスケットとチヤを別々に食べているとビギャンが真剣な顔で「ビスケットはチヤに入れて食べると美味しいんだ。」とジェスチャー付きで解説。「はいはい。」と言いつつ、うっかりチヤにつけるのを忘れると、どこから見ていたのか慌ててビギャンが飛んできて、「ビスケットはチヤ。」と言ってジェスチャーしてくれます☆
そしてビギャンはとにかくネパール語で私に話しかけてくるのです。
「??わからないよ。ビギャン。」と言うと、すごく近寄ってきて大きな声でゆっくりと、ネパール語で話します。
「いやいや、大きな声でゆっくり言われても、 そのネパール語自体がわからないんだよ…。」と、心の中でツッコミます。
あまりにわからない時のこと、
「ビギャン、英語で話して。」と言うと変な表情をしています。伝わらなかったのかな、と思っていると、プラカッシュが、
「みる、彼、英語で話してるよ…。」と。
え…英語もぜんっぜんわからない…訛りが強すぎて…。
でも私のネパール語も友人以外に話すと、
「??」と言う顔をされます。そして私のネパール語をプラカッシュがネパール語で通訳してくれます☆ お互いさまなのです。でもそんなビギャンともアートの話となるとかなり通じます。同じ基盤の上に立っているからでしょうか。それともお互い通じてると思ってるだけでしょうか…☆
さぁ、みんなでお祭りへGO☆








踊り手の男性たちの中には、若い人もいればどう見てもおじいさんの踊り手も少し辛そうに踊っているのです。とても苦しそうな表情で休憩していました。
「どうしておじいさんが踊っているの?とても辛そうよ。」と、プラカッシュに聞くと、
「彼は神さまの踊り手のカーストだからね。子供の頃から死ぬまで彼は神さまとして踊るんだよ。」
「えぇええぇぇっ!死ぬまで!じゃぁ、彼が亡くなったあとは彼の…孫とかが継ぐの?」と、聞いてみると、
「うん。ファミルーグループの誰かだね。」と、ピーナッツをぽりぽりかじりながら答えてくれました。
ちょっと衝撃でした。何だかすごい覚悟が必要な気がするけれど、ここではこれは当たり前の風習なんだ。
そして、この町には「神さまの家」と呼ばれている建物があって、お祭りの最後の夜に神様たちがゆっくり踊りながらこの家の中に入って終わりなのです。それが今日の夜なのだそうです。
「そういえば、プラカッシュは名字がチットラカールよね?チットラカールって画家って意味よね?」
「うん、だからうちは画家のカーストなんだ。」
名字を聞くと職業がわかる。「画家の誰それさん。」みたいな感じなのかな。
ビギャンの奥さんやプラカッシュの妹たちとも合流してみんなでお祭りを見ていると、突然の大雨。もう本当に空に浮かんでいた水桶がひっくり返ったようなすごい雨なんです。神さまも見ている人たちもいったん建物の中に入って雨が小さくなるのを待っていました。私たちも誰の家かよくわからない人の家の中でチヤやビスケットを出してもらって、食べながら待つことに。(ビギャンがまた走ってきてあのジェスチャーを何度もすることになりました☆)
でも、雨はなかなか小さくならず、このままではゲストハウスの9時の門限に間に合わない模様。ネパールでは日本と違ってタクシーを拾ったりするのがとても難しいのです。でもこの雨ではさすがにスクータの後ろに乗って、と言うより、スクーター自体に乗ることができません。
ちょっと心配になってきたとき、ビギャンが「今日はうちに泊まるといいよ。そしてみんなで夕食を食べよう。」と申し出てくれたのです!(奥さんが英語で通訳してくれました☆)プラカッシュがゲストハウスのアルーンに電話をして事情を説明してくれました。
そのあとしばらくして雨も小降りになり、お祭りも再開しました。


神さまたちがゆっくりゆっくりと踊りながら、くるりと最後の回転をして神さまの家に入って行くところを見るのは感動的でした。みんなの名残惜しそうな空気が伝わってきます。松明の炎、音楽、全てがドラマティックで映画の中のようでした。
「感動するね。」と、プラカッシュを見ると彼の目に涙が光っていました。
「泣くくらい。」と言って彼は泣き顔で微笑みました。
この瞬間、本当に感動しました。まだ若くて、ジブリのアニメや村上春樹が大好きで、英語版でそれらを観たり読んだりするこの人が、毎年やってくる地元のお祭りで、最後の日の神さまがおうちに帰るところで、この神さまの中に誰が入っているのか知っているのにも関わらず、感動して涙を光らせるなんて…。きっと彼だけではくて、ここにいる人たちみんながそうなんだろうと思うと、理由はよくわからないのですが、ぐっと胸にせまってくるものがありました。
ちょうど帰る時間の少し前から大雨になって、帰れなくなって心配したけれど、そのおかげで神さまたちがおうちに帰る最後の夜のこのシーンを見ることができたなんて、神さまの恩寵かもしれないな、なんてふと思いました。

そうして無事にティミのお祭りは終わり、ビギャンのうちでみんなで夕食をよばれました♪そして、ビギャンのお母さんのベッドを借りて、彼の奥さんに世話してもらって、ゆっくりぐっすり眠ることができたのでした。
明日はネパール最後の日。明後日、日本に帰るんだ。そしてバクタプルは明日がお祭りの最終日!またまたアンジュと一緒にお祭りにくり出す約束をしているのでした☆お祭り三昧!
つづく。
*2018年からのネパール滞在記全20話はこちらから♪
*2017年までのネパール滞在記はこちらから♪
*5月、絵本deえがお美術館で「さかいみる ネパール滞在記 お話会」開催予定です!スクリーンで美しい写真もたっぷり観ていただきたいと思います。